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2010.06.05

AUTOCRAFT

 

1996年にレイブリックが誕生するそのほんの少し前、東京都港区にAUTOCRAFT(オートクラフト)という名の、おそらく日本で最初のランドローバープロショップがオープンしました。それを知ったのは、ランドローバーの専門誌であるランドローバーマガジンの広告でした。(写真は1996年9月に発売されたランドローバーマガジン5号掲載のAUTOCRAFTの初広告)

 

後に知ったことですが、AUTOCRAFTを立ち上げられた大橋社長は、都内ランドローバーディーラーの総合的なサービス工場である港サービスセンターの工場長を務められてきた方でした。僅か一年前の1995年に初めてランドローバーに出会った私など、足元にも及ばないほどの存在に感じました。以来、目標というよりは一種の憧れに近い感情を抱き続けました。

 

初めてAUTOCRAFTを訪ねたのは確か1999年の7月でした。特にアポイントをとらずに出かけたので大橋社長は不在でしたが、忙しく仕事をされていたエンジニアの方がその合間を縫ってとても丁寧に対応してくださいました。
その数ヵ月後、大橋社長がLAYBRICKに来てくださいました。初めてお会いする大橋社長は、正直、私の想像とは大きく異なりました。ローバージャパンの港サービスセンターという巨大サービス工場を取りまとめておられた方ということで、見るからにとても厳しそうな人間像を勝手にイメージしていたのです。しかし実際はとてもおおらかで、終始表情も柔らかくて優しそうでした。AUTOCRAFTへの「憧れ」は、大橋社長への尊敬の気持ちと相まって更に大きなものになりました。
以来、国内では数少ないプロショップ同士ということで、とても友好的なお付き合いをさせていただいておりました。

 

今だからゆえにお話しますが、LAYBRICKは近く関東へ進出することを計画しておりました。その話を大橋社長にしたのは今年の2月のことでした。既に都内中心部にAUTOCRAFTがあるので、東京都は全く視野にありませんでした。もちろん、都内に支店を構えるには家賃などさまざまな障害があり、私にはとても困難に思えました。そこで、愛知県とのアクセスを考え、神奈川県内をターゲットに考えておりました。

 

私がそんなことを考えている最中にも、大橋社長の中にはあるひとつの心配ごとがありました。今年65歳になられた大橋社長にとって、最大の悩みはAUTOCRAFTの後継者でした。AUTOCRAFTのスタッフの将来、そしてAUTOCRAFTを支えてくださっているお得意さまや関連業者のみなさまとの関係などなど。自分の年齢を考えると5年後10年後も現在の状態を維持するための気力と集中力そして体力を持ち続けることができるだろうか?
そんな話を聞いたのは、翌3月のことでした。そして驚くことに、大橋社長からの提案は、AUTOCRAFTを引き継いでもらえないか?という大胆なものだったのです。「加藤さんが関東進出を考えておられるなら、是非AUTOCRAFTを関連付けて考えてもらえないだろうか?」と。神奈川県内でのLAYBRICK関東支店の青写真が、一瞬のうちに両手で小さく丸められてしまったような感覚でした。

 

ただ、それ以降、AUTOCRAFTとLAYBRICKをどうのようにジョイントさせるのがベストなのか、頭の中はヒートアップするばかりでなかなか整理がつきませんでした。時には、丸められた関東支店の青刷りを広げてみたり、しかし、それが全く無意味に思えたり。
いろいろ考える中でも、私の中では揺るがないある感情がありました。日本で最初にオープンしたランドローバープロショップであるAUTOCRAFTのブランドをこの先も大切にしていきたいということです。そして、私なりにひとつの結論を出しました。これからLAYBRICKの神奈川支店を始めることよりも、東京にAUTOCRAFTが存続し続けることのほうが何倍も大切なことであるということです。

 

4月、私は大橋社長に連絡をしました。AUTOCRAFTを築き上げてこられた大橋社長の意思を、是非私に引き継がせてください。東京にAUTOCRAFTは必要です。ですから、AUTOCRAFTがLAYBRICKの関東支店にすり替わるのではなく、AUTOCRAFTをAUTOCRAFTのまま存続させる努力をいたします。そう、お伝えしました。

 

日本の自動車業界、その中のコンマ数パーセントでしかないランドローバー界、そのまた狭いところで起きた取るに足らない出来事かもしれませんが、私にとっては人生最大の山場を迎えたといっても過言ではありません。
既にお気づきの読者の方もいらっしゃると思いますが、少し前からブログのタイトルが変わっていたのはこんな経緯があったからです。これからは「LAYBRICKの加藤」であり、そして「AUTOCRAFTの加藤」でもあります。

 

驚かれた方も多いと思います。またそれ以外の様々な思いを抱かれる方もいらっしゃることでしょう。いずれにしても、今後、加藤ブログでは更に幅広くランドローバーとそれ以外のあらゆることを読者のみなさまにお伝えできる環境が整ったのです。
今後も加藤ブログをどうぞよろしくお願いいたします。

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