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2012.10.02
ランドローバーのメンテナンス基本整備・基本性能
サスペンションやステアリング系などの下回りの増し締め、もちろんそれはとても重要なことなのだけれど、しかし、現実的には現代のクルマの多くは増し締めをする必要がほとんどなくなっている。現代といっても、私が自動車業界に入り、国産車の整備に携わるようになった1990年ごろには既に、増し締めの必要に迫られたクルマにお目にかかることはなかった。
例えば、車検整備をしたとしても、自らが整備をした箇所をその確認の目的で締まり具合いの確認をすることはあっても、新車時から誰にも触られたことがないボルトがまさか緩んでいるなんて考えたこともなかった。自動車検査員は車検整備完了後に点検ハンマーを使って各部をチェックするのだが、それでさえも緩んでいることなどあり得ない上での、一種のパフォーマンスにも見える作業だった。
1995年にランドローバーに出合ったとき、それまでの常識が完全に覆った。増し締めが必要なクルマが日本に存在するのだと!高速走行時にふらつくというお客さまからの申し出があり、下回りをチェックした。一見なにも異常はない。ダメ元でボルトにレンチを当ててみると、あれ?締まる・・・。あれあれ?ここも、あそこも。
そんな具合いでフロントからリヤまであらゆるボルト・ナットを締め込んでいった。まあ、締まる締まる!そして試運転。まったく別モノのクルマになった。
それ以来、新車であろうと点検や車検で入庫したクルマであろうと、片っ端から締めていった。車検から帰ってきたら調子が良くてビックリされるお客さまもいたほど。あまりに走りが違うものだからショックアブソーバーの交換でもしたのではないかと思って請求明細を見るのだが足周りに関するパーツは使われていない。それでも、もしかしたら何か請求するのを忘れているのではないかと、そんなふうに心配して電話をしてくれた方もいた。
今回、レイブリックへ初めて入庫していただいて点検整備を行っているディフェンダーは、過去にいくつものサービス工場をすり抜けてきてしまったクルマ。車検や点検整備、中古車として販売されてきたときの納車前整備、それらを全て潜り抜けてきて、下回りのあらゆるネジが緩いまま今回に至っている。きっと、20年近く前の私のように、「ネジが緩んでいるはずがない」と信じきっているメカニックだけに触れられてきたのだろう。
今回の点検整備で、ここもあそこもしっかり締まりまった!これが本来のディフェンダーの走行性能だと、きっと実感していただけるだろう。
[記事執筆 加藤雅俊(レイブリック創業者)]
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